春夏秋冬。
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ある人生
 
香月泰男 海拉爾(ハイラル)(1973)








         私が死んだら私のことはすっかり忘れてください。
         けがれなき聖母のことだけを覚えてください。

         - マキシミリアノ・マリア・コルベ -
            








その経験が特別なために他の人と心を共有するのが難しいことがあります。そのような時にはただその人のことばに耳を傾け、思いをよせる他にはできることがないかもしれません。

満州の航空隊で指揮をとっていた父は、終戦後中央アジアの炭坑で四年を過ごした後に帰国しました。彼は当時のことについて多くを語りませんでしたが、85歳の生涯を閉じる際に最後に口にした言葉は、部下であった隊員の名と伝達のための号令でした。









             悲しみはかたい物質だ
             そのひびきを呼びさますため
             かならず石斧でうて
             その厚みは手づかみでとらえ
             遠雷のようにひびくものへ
             はるかにその
             重みを移せ
             悲しみはかたい物質だ
             剛直な肩だけが
             その重さに拮抗する
             拮抗せよ
             絶えず拮抗することが
             素手で悲しみを
             受けとめる途だ

             - 石原吉郎「物質」-






       目の前のパンのためにだれかをおとしいれて生き延びたひとよりも
       そんな厳しいなかでも夕日がきれいだとか一輪の花がきれいだとか
       いっている人が結局生き延びていった。

  - アレクサンドル・ソルジェニーツィン「イワンデニーソヴィチの一日」-






       確かなのは私が米兵が私の前に現われた場合を考え、
       それを射つまいと思ったことである。
                (中略)
       私は生涯の最後の時を人間の血で汚したくないと思った。

       - 大岡昇平「俘虜記」-







       祝福しなさい。その運命を。信じなさい。その意味を。

       - ヴィクトール・エミール・フランクル「夜と霧」-



















聖母の恵み
 
Hope (c)anicolas







            何事にも心を騒がせず
            何事にも恐れることはない
            すべては過ぎ去っていく
            神のみ変わることがない
            忍耐はすべてを勝ち取る
            神を己のうちに抱く者には
            何も欠けることがない
            神のみで満たされる

            - アビラの聖テレサ -





      
*      
            Let nothing disturb thee;
            Let nothing dismay thee:
            All thing pass;
            God never changes.
            Patience attains
            All that it strive for.
            He who has God
            Finds he lacks nothing:
            God alone suffices.

            - Saint Teresa of Avila ( 1515 - 1582 ) -








私たちは古くから自然の山や川、岩、樹木、また聖像や絵画などをとおして人間を超えた大いなる存在に向かって祈りを捧げてきました。そして祈りのなかでその大いなる存在とつながりを持ち、意識の交流を実感し、または一つであることを体験しようとするのです。

聖母を深く信仰する人々には実際に聖母が現われることがあります。幻視などともいわれますが、しばしばその聖母からことばを受けたりすることもあります。

ポルトガルのファティマに出現した聖母はいくつかの予言を子供たちに与えたことで有名ですが、その本質は聖母の出現が真実であったかとか予言が正確であったかということではなく、真摯な心をもって生きる人たちには、勇気と希望をもたらすしるしが与えられるということではないかと思います。

ひとすじに、懸命に生きる人びとには、そのような恩寵は目には見えないかたちであってもひとしく注がれているのではないでしょうか。




























歌のささげもの
 







            光明(ひかり)よ 君を敬(ゐやま)ふ
              わが罪を 払へ
            わが額(ぬか)に 父の
              祝福(よごと)を 置け
            風よ 君を敬ふ
              わが愁ひを 消せ
            身の隅隅(くまぐま) 撫でよ
              父の祝福もて
            大地よ 君を敬ふ
              わが望みを みな叶へよ
            家を隅なく 稔(みの)らせよ
              父の祝福もて

            - タゴール「ギーターンジャリ48」渡辺照宏 訳 より -













- ラビンドラナート・タゴール( Rabindranath Tagore: 1861 - 1941 ) -

タゴールは、父から譲り受けた土地に理想とする教育を実現するために、シャンティニケタン(平和な家)という名の学校をつくりました。

彼の思い描く理想とは、子供は花や小鳥といっしょにいるのがいちばん自然で、その中にいるときにはじめて子供たちはその隠れた個性を十分に発揮することができる、ということでした。教育とは外から与えるものではなく、本来備わっている英知を引き出すための手助けをすることであると考えました。

子供たちには、自分を自然に表現するために、小鳥のように歌いなさいと教えました。そして、自らも澄んだ笛のような声で歌いました。

ベンガル語で書かれたギーターンジャリには曲がつけられていて、ベンガルの人々は誰もがタゴールの詩を吟誦するのだそうです。

ギーターンジャリ(歌の捧げ物)の名のとおり、この長大な詩編には「その方」への思慕・祈り・献身の思いが厚く謳われています。











ご主人さま、私はあなたにお祈りをする ー 私の心のみじめさを覆して下さい。
私の喜びも悲しみも楽楽と耐え忍ぶ力を下さい。
私の愛が奉仕して豊かに実るように力を下さい。
貧しい人を拒んだり、傲慢な権力の前に膝を屈めたりしないで済むように力を下さい。
日常のつまらない営みに私の心がこだわらないように力を下さい。
そして、私の力が愛情をこめてあなたの意志に服従するように、力を下さい。

- ギーターンジャリ36 渡辺照宏 訳 -


















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